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モルガン・スタンレーの賭け

 モルガン・スタンレー。トップであるゴーマン氏が主導するイー・トレードの買収はゴールドマンサックスとの差を広げることになるだろうか。

 ゴーマン氏はマンハッタンの自宅で、コロナウイルスと戦っていた。イー・トレードの買収に130億ドルもの巨費を投じるのに、逃げ出す人もいるかもしれない。しかし、数カ月のうちにゴーマン氏はイー・トレードとは別の取引を進めていた。投資マネージャー業を営むイートン・バンスを70億ドルで買収することを決めたのだ。

 この取引は先週公表された。

 ゴーマン氏は両方の取引とも長年にわたって戦略的には明確な取引である、と述べた。

 ゴーマン氏は62歳のオーストラリア人で、危機時の買収の歴史をつくってきた。2008年の金融危機の直後には、シティグループからスミスバーニーを買収した。収益が大きく変動しがちに投資銀行に安定的な収益をもたらし、モルガン・スタンレーのバランスシートに安定的な資金調達源をもたらす135億ドルもの取引であった。

 その結果、危機前の最高値を22%上回る収益を2019年に達成する基礎を作り出した。

 ミレニアル世代に人気のオンライン証券会社のイー・トレード、そしてイートン・バンスとともに、ゴーマン氏はモルガンスタンレーの輝かしい成長シナリオを描いている。

 今回の決定はモルガンとゴールドマンの差をさらに広げることになるとみられている。両社はともにウォールストリートの一流金融機関だが、キャッシュマネジメントやクレジットカードなど新しい分野の金融ビジネスに進出し、さらなる成長を模索している。

 ゴーマン氏がアナリストに語ったところによると、10ねん前は、モルガンのアセットマネジメントビジネスは、モルガンの他の部門を安定させるほど大きくなかった。

 教科書通りの買収を行ったにもかかわらず、モルガンの株価は反応しなかった。PBRで1倍ギリギリの49ドル近辺で取引されたままである。

 しかし、マーケットはコロナ危機により、金利は当面低位で推移するとみており、イー・トレードの収益性を押さえることになるとみている。さらに、イー・トレードの顧客をモルガンスタンレーのメインのビジネスに引っ張ることができるのか、疑問視しているのだ。

 さらに、イートンバンスの買収については、40パーセントものプレミアムを支払ったことに投資家は眉をひそめている。

 モルガンにとって、2008年の金融危機の衝撃がいかほどだったのか、いくら大げさに言っても大げさすぎることはないだろう。モルガン・スタンレーは1935年にグラス・スティーガル法の要件を満たすために、JPモルガンから分離して誕生した法人向け金融機関である。そのモルガン・スタンレー金融危機に際して生き残れるのか。多くの人に心配されたという。

 2008年9月にはMUFGが90億ドルをモルガン・スタンレーに投じた。

 当時の優先順位の上位にきたのが、モルガン・スタンレーレバレッジの縮小だ。当時は、株主資本の30倍の資産があった。それを13倍まで減らした。

 当時、シティと折半出資だったスミスバーニーの株式をすべて買い取るのはその4年後だ。

 https://www.ft.com/content/22d7c870-870d-4423-bd6f-6e384961f997