英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

ロックダウン後の世界

 エコノミストより。ロックダウン後の世界を論じている。想像するだに困難な世界がさまざまな面で待ち受けている、と。

 コロナ後の世界は悲惨なものになる。それは中国がなぜかを示してくれる。

 中国は2月にロックダウンを終了させた。工場は忙しくなり、路上にはもはや人がいない、ということはない。しかし、その結果は「90%経済」とでもいうべきものになっている。

 非常に厳しいロックダウンよりもましだが、通常とは程遠い。それは日常生活の大きな欠損とでもいうべきものだ。地下鉄や国内路線は3分の1の規模に縮小した。レストランのような消費も選別的に行われ、40パーセントも落ち込んでいる。ホテル需要も大きく落ち込んだ。

 そして、人々はコロナ第2波を警戒している。失業や倒産は増え、通常の水準の3倍、約20%まで上昇するという説もある。

 もし、コロナ後の世界において先進国も同様であるなら、生活は相当厳しいものになる可能性がある。それはワクチンや治療法が見つかるまでだ。米国のGDPの下落幅は10%になるとの予測もある。これは第二次大戦後としては最大規模となる。

 どのようにしてロックダウンを緩和するかは、経済に与えるダメージの大きさに依存している。例えば、費用便益分析は学校再開を示唆している。

 一つは不確実性だ。ロックダウンをやめて、コロナウイルスがどのように動くかは未知数だ。こうなると、病気を恐れる人々は動こうとしなくなる。米国においては経済が再開されても、3分の1の米国人はショッピングモールに行くことをためらうと述べている。

 ドイツでは、小規模商店の再開を先週認めたが、顧客は戻ってこない。特に旅行やエンタメ関連の消費は80%近く落ち込んでいる。デンマークエコノミストによると、スウェーデンの隣にあってロックダウンをしていないのにも関わらず、消費は同じくらい落ち込んだという。

 多くの企業がバランスシート上の問題と需要落ち込みに直面している。ゴールドマンサックスの調査によると、およそ3分の2の米国の小規模経営者は3カ月以内に現金が尽きてしまう、と述べている。英国ではテナントが家賃を支払えなくなっている。

 今週、ボーイングの経営者は航空機を使った旅行は今後2~3年間は2019年の水準には到底届かない状況が続く、と述べた。GDPの4分の1を占める設備投資も、キャッシュを確保するためだけでなく、リスクを計算できないゆえに、投資できない状況だ。

 特に打撃を受ける企業は、低賃金の労働者を数多く雇っている。ロックダウンの期間中、職業スキルを失う人々が数多く出てくる可能性もある。米国において失業期間の長かった人々は「失われた10年」を経験した。政府の支援策は短期的には企業を救うが、長い目でみると、生き残ることも倒産することもできないゾンビ企業を徐々に生み出していく。その結果、資本や労働の再生産を阻害してしまう。

 景気停滞が長引けば長引くほど、先進国では人々の怒りが増幅していくことになる。普通の人々に不当な重荷を負わせることが出てくることになるだろう。政治が過激化することも考えうる。

 開かれた市場と限定された政府機能という理念を信じるのであれば、重要なのは変革を正しい方向に向かわせるエネルギーを確保することだ。もしパンデミックが変革に対する障壁を引き下げたのだとしたら、社会契約から疎外された人々に再び光を当てるチャンスであるともいえる。

 ドイツや台湾のような成功例は、ポピュリストの目立ちたがり屋が時間を空費しているのとは対照的に、しっかりとした組織力でコロナに対処したことを示している。

 https://www.economist.com/leaders/2020/04/30/life-after-lockdowns