英字紙ウォッチング

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チェルノブイリ・モーメント

 快晴。

 中国の習近平主席は、ロシアのチェルノブイリのような局面に直面している。独裁政治の愚かしさを、コロナウイルス危機は見事に露呈させた。

 中国の歴史を通じて、帝国の治世は王朝交代制と呼ばれるサイクルがあると信じられてきた。力強く、中国全土を統合した指導者は、帝国を打ち立て、繁栄するが、次第に衰退し、天命を失い、次の王朝に治世を投げ出すというものだ。

 似たようなサイクルが欧州においても存在する。王朝が交代する際に天命だとされるのが、自然災害や飢饉、疫病や侵略、武装蜂起などもその兆候だとされる。

 中国の習主席も2012年に権力を得て以降、古代からの伝統と信念に基づいて復活しようとしている。

 しかし、彼自身は王朝交代説や天命ということに言及することを避けているように見える。昨年以降、中国にとって最大の貿易相手国との紛争や香港における氾濫、豚コレラの流行による豚肉の不足など、伝統的には不吉な予兆とされる出来事が次から次へと起き、王朝の終焉は近いと思われた。しかし、こうした出来事も、今回のコロナウイルスの大流行と比べれば、色あせてみえるほどだ。

 歴史を振り返ると、武漢清王朝が倒された1911年の革命が最初に起きた土地である。そして、実に6000万人の人々が隔離されようとしている。

 そして、中国の権威主義的な政治システムが、特に公衆衛生上の危機に迅速かつ透明性のある形で対処するのに不適切であることを露呈した。もし今後数週間のうちにコロナウイルスが封じ込められれば、習氏は危機を地方幹部のせいにすることで、相対的に無傷で済むだろう。しかし、ウイルスを迅速に封じ込められなければ、中国にとってチェルノブイリの時と同じような危機が襲うだろう。

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