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ヘッジファンド時代の終わり

 雨。

 ヘッジファンドの創設者であるルイス・ベーコン氏が業界を去った。最前線からの引退は、マクロファンドにおいて一時代を築いたヘッジファンドの不振を象徴している。

 1990年にサダム・フセインの戦車がクウェートに侵攻したとき、ある若きトレーダーはひと財産を築いた。当時34歳のトレーダーであるルイス・ベーコン氏で、その年の初め、小さなヘッジファンドを創業した。

 母親から相続した2万5000ドルが元手だった。彼の最初の動きは、株価が下落し、原油価格が急騰するイラクの侵攻に賭けるものだった。

 ベーコン氏が創業したばかりで、生まれたてのムーア・キャピタルは、最初の1年間で86%の利益を上げた。そして、ベーコン氏をヘッジファンドの歴史に名を連ねさせた。それ以外の大規模で、成功した取引は地政学的かつ経済上のトレンドに乗って賭けるものだった。「グローバルマクロ」として知られることになったヘッジファンドのスタイルの誕生だ。

 ジョージ・ソロスやスタン・ドラッケンミラーら、ほかの著名なグローバルマクロ投資家のように、ベーコン氏はヘッジファンド運用者の、人気あるコンセプトを作り出すことになった。全能の海賊のように世界経済の大波に乗り、国の運命も左右する。

 しかし今週、そのキャリアにベーコン氏は終止符を打った。63歳になったベーコン氏は、旗艦ファンドを閉じ、残る資金を返還すると発表した。ここ数年、ムーア・キャピタルの成績は芳しくなく、その資産は昨年末に89億ドルまで減少していた。

 ベーコン氏の40年に及ぶキャリアは、ヘッジファンド産業の変化を象徴している。1980年代は豪傑の時代で、一握りの運用界におけるスターマネージャーが富裕層の個人を相手にしていた。2000年代を過ぎると、組織の資金が登場し、リスク志向を減退させた。そして、手数料にも下方圧力がかかった。

 さらに、マクロヘッジファンドの引退を後押ししたカタリストは、ボラティリティがなくなったことだ。

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