英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

リーマンショックの検死報告書

 リーマンショックから10年が経過し、その回顧が盛んである。FTのテット記者の記事。洞察にあふれた記事である。
 予測は困難だ。特に将来についてはそうだ。検死報告書が積み上がるに伴い、もう一つ発してみたくなる誘惑にかられる問いがある。10年前に想定されていたのと比べ、今日の金融の道行きはどうであったのか。私の答えは少し驚くべきもの、というものだ。
 金融がどのように進化したのかをみれば、少なくとも5つの特徴が浮かび上がる。まず、負債についてみてみる。10年前、投資家や金融機関は、過剰なレバレッジは危険であることを改めて学んだ。それゆえ、債務は減る傾向にあると考えるのが自然であろう。しかし、その後の推移はそうではなかった。米国の不動産市場ではデレバレッジがすすんだ。しかし、世界全体でみると、債務は膨らんでいる。昨年の債務総額はGDPの217%にあたる。
 2つめのサプライズは、銀行の規模の大きさだ。リーマンショックの破綻の効果により、大きすぎてつぶせない危険性がはっきりした。それゆえ、銀行の分割を主張する意見が出た。しかし、大手金融機関は依然として大きい。
 米国の上位5位までの銀行は、銀行資産の47%を保有している。この数字は2007年には44%だった。規制当局が大きすぎてつぶせない問題のジレンマを解決したのかどうか、定かではない。
 3番目の問題は、米国の金融の相対的な力の強さだ。2008年当時、危機は米国製の物語だと思われていた。メルトダウンの根っこには米国のサブプライム融資があり、ウォールストリートの金融技術があった。
 しかし、その後、米国の投資銀行は欧州のライバルをほとんどあらゆる意味で凌駕している。ディールのシェアやROE、株価のパフォーマンスに至るまで。
 4つめはノンバンクの実情だ。10年前、シャドーバンク問題が発見された。しかし、この問題が発見された後も、依然としてシャドーバンクは生き延びている。
 https://www.ft.com/content/73e3ae2a-b1ca-11e8-8d14-6f049d06439c