英字紙ウォッチング

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アルゼンチンの三連続利上げ

 晴れ。アルゼンチン情勢の続報である。
 アルゼンチン通貨ペソを襲った災難が新興国市場を大きく揺らしている。左派や右派だけでなく、市場からも攻撃された、アルゼンチンのマクリ大統領は有権者や投資家に対し、経済改革をゆっくりと進める考えにこだわりを見せた。アルゼンチン国民が一人も取り残されないように、漸進的な改革を進める道を選ぶ、と59歳の大統領はパタゴニアのシェール油田から放送で述べた。もう一つの選択肢はショック療法だという。
 しかし、先週のこの放送にも関わらず、投資家はペソから逃げ出そうとしている。アルゼンチン中央銀行はすでに3回の利上げを行い、50憶ドルの為替介入に乗り出しているにも関わらずだ。新興国市場においてアルゼンチンは最低のパフォーマンスを記録している。
 マクリ大統領の漸進的改革は、アルゼンチンで急増している経常収支赤字や高いインフレ率、財政赤字に対する関心に対処することができなかった。同時にドル高と米国金利上昇によって、新興国市場は大きな圧力を受けていた。
 投資家の多くが直面している問いは、アルゼンチンが例外的ケースなのか、それとも、米国の超緩和的な金融政策によって大きな恩恵を受けた時代が終わる先導者という存在なのかだ。
 ペロン主義によるポピュリスト的な政府が何年も続いた後、マクリ大統領は税制改革や年金、補助金の改革に乗り出した。しかし、痛みを最小化するため、改革はゆっくりとした速度でしか進めようとしなかった。過去70年間アルゼンチンでゆっくりした経済改革はすべて失敗に終わった、と述べるエコノミストもいる。
 マクリ大統領率いる政府は、ゆっくりとながら政府財政のプライマリーバランス赤字を減らしつつある。しかし、2001年の経済危機を含め、最近のアルゼンチン危機の大半は、財政赤字は今よりも小さいときに起きているという。一つの理由は金利支払いが増えていることだ。マクリ政府は1000億ドルを外貨建てで借り入れている。中央銀行による最近の介入、すなわち、金曜日には政策金利を40パーセントにした措置は、市場から完全な信任を回復するには至らなかった。
 中央銀行はペソ安を防ごうとしているが、そのことはインフレ率を高め、海外債務の実質負担を減らすことを難しくし、そのことで事態を鎮静化させる力を弱めてしまう。1月に640億ドルあった外貨準備高は、水曜日には550億ドルまで減少した。
 しかし、アルゼンチンは他の脆弱な新興国市場によって大きく揺さぶられてきた。債務の増加とドル高である。この困難な状況は、1994年のメキシコ危機や1997年から98年にかけて起きたアジア通貨危機によく似ている。
 投資家の新興国市場への関心のうち、最大のものは債務である。4月の投資家による新興国債券の購入額はわずか3億ドルにとどまった。
 ただマクリ大統領の支持率は50パーセントほどとまだ高い。それゆえ大統領にまだ政策を探る余地は残されている。
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