英字紙ウォッチング

英語メディアの経済、政治記事を定点観測

分裂するアメリカ

 今週のエコノミストはトランプ氏と分裂する米国というテーマである。
 トランプ氏の指名は繁栄する国家米国を、非常に大きな自分自身で招く危険にさらすことになると警告している。
「morning in America」からイエス・ウイ・キャンまで、つまりレーガン大統領時代からオバマ大統領まで、米国の大統領選挙のキャンペーン文句は常に楽観論に満ちていた。調子の良いトーンのメッセージを何度も繰り返し、その候補がたいていは勝利した。
 2016年の大統領選ではそうした過去の経験則が大きく覆されることになりそうだ。反米国の悲観主義に包まれている。人種間の関係は、射殺事件が続き、暗いものになっている。右も左も、政治家たちは米国の資本主義は、自分自身の利益を追求するエリートたちの集団によって掘り崩されているために、普通の人々にとって失敗策になっていると主張している。
 確かに米国は多くの問題を抱えているが、その自画像は、過去より反映し、より平和で、より人種差別的ではない国の戯画化された姿に過ぎない。現実的な脅威は、人々の怒りを煽る一人の男によってもたらされている。彼が勝利するにせよ、敗北するにせよ、トランプ氏は米国をより機能不全の方向へ米国を作り変える力を持つようになるだろう。
 暗澹たるレトリックと最近の実際のパフォーマンスとの差は、特に経済分野で著しい。米国経済の回復はすでに過去4番目の長さに達している。人種問題についても、近年大きな改善が見られている。1995年の世論調査では半分の人々が人種間の婚姻を認めると答えていたが、現在は90パーセント近い。
 こうした進展があるのにもかかわらず、最近多くの米国人は人種問題についてますます悲観的担っている。オバマ大統領が登場した後、白人と黒人との関係は良好だと答えた人の割合は68パーセントから47パーセントへ落ちた。黒人大統領の誕生は人種問題の進展についての究極の証拠であるとみられていたが、実際は事態はより悪化している。
 この健康状態と受けとめ方とのギャップをどのように説明すれば良いのだろうか。後世の歴史家は2011年のことをこのように表現するだろう。現在、白人と非白人の出生率は同じだが、高齢化の度合いは白人の方がよっぽど進んでいる。2045年には白人はマイノリティに転落するだろうと予測されている。この人口学的な分裂が党派の対立を強めているのだ。
 TPPやメキシコとの関係も問題だが、トランプ氏が大統領になって最も懸念されるのは、気まぐれで国家安全保障に関する重大な決定をしてしまうことだ。
 現在、トランプ氏が勝利する確立は3割だとみられているが、これはブレグジットの事前予想と同じである。
 http://www.economist.com/news/leaders/21702188-donald-trumps-nomination-cleveland-will-put-thriving-country-risk-great