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英語メディアの経済、政治記事を定点観測

QE2スタート

 雨交じりの天気。129回目の更新。

 Fedが量的緩和に踏み切った。
 http://www.ft.com/cms/s/0/33280f9e-e779-11df-b5b4-00144feab49a.html
 2011年の第2四半期までに約6000億ドルの長期米国債を買い入れる。将来、この買い入れ額の増額の含みがなかったため、声明に市場は失望しかけている。
 議会は上下両院で過半数の党派が分かれているため、Fedにとって、経済刺激の最後のチャンスになる。
 しかし、QE2の効果について、経済学者は懐疑的だ。多くの消費者はより貯蓄に励み、消費を抑え、債務の返済に励んでいる。そして、何百万人もの住宅保有者は、差し押さえの可能性におびえている。むしろ、QE2によってドル安が起き、海外の他の諸国に与える影響を懸念する声もある。
 6000億ドルという規模は、市場の予測より若干大きかった。しかし、毎月750億ドルを購入するというスピードは、事前予測より遅い。
 Fedの声明の最大のサプライズは、このプログラムが終わった後の追加購入の道筋が示されなかったことだ。
 FOMCは10対1で、QE2を決めた。ただ1人の反対者はカンザスシティ連銀のホーニグ総裁だった。
 同時にニューヨーク連銀が声明を公表し、買い入れ債券の平均デュレーションは5から6年と述べた。

 関連記事。
 http://www.ft.com/cms/s/0/5c42260c-e789-11df-b5b4-00144feab49a.html
 Fedの決定のポイントは、アップフロントでいくら買い、買い入れのスピードはどれくらいで、買い入れ規模がどの程度か、だった。
 毎月の買い入れスピードは、事前予測では800億ドルから1000億ドルだった。
 先行きについての記載は、次のような表現にとどまった。“employ its policy tools as necessary to support the economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate.”
 来週、ブラックアウトの期間が過ぎると、Fedの高官がスピーチで決定に至った詳細を話し始めるだろう。
 Fedは次の2点を今回改めてはっきりさせた。一つは、for an “extended period”、非常に低い水準の金利を続けると約束したことだ。
 もう一つは、債券買い入れの重点を短期債から満期まで20年から30年の長期債へシフトさせない、としたことだ。長期債へシフトすべきだ、という意見もあるが、そうでない意見もある。それほど長期の債券の発行は少なく、Fedの今回の大規模買い取りが行われると、長期債市場をゆがめてしまう危険性がある。また、5年から10年債のゾーンが一番経済に影響がある。3点目として、Fed自身が、徐々に出口政策を開始することを考えて、長期債を購入するより、売却したいと思っている。
 
 PIMCOのエラリアンの投稿。
 http://www.ft.com/cms/s/0/af370888-e77e-11df-b5b4-00144feab49a.html
 市場の期待を考えれば、FedにQE2を導入する以外の選択肢はなかった。しかし、経済を成長させ、雇用を回復する手段としては、なまくらだ。QE2のメリットは、他国の負担ゆえに発生する。
 Fedは経済指標が失望させるようなものであれば、追加の緩和期待の可能性を示唆することで、市場の期待に働きかけた。
 FedはQE2の副作用も認識している。3つの問題がある。一つは、中央銀行のみが経済の問題を解決できるわけではないことだが、他の政府機関は動くことができないでいる。構造的な改革がないと、今回の量的緩和は米国の外に流出し、他国への資本流入につながってしまう。
 2番目が、新興国における流動性の急増だ。ブラジルや中国では、過熱感がみられる。そして、それが通貨における緊張や資本流入規制や貿易保護主義につながる危険性がある。
 3番目が、世界経済における米国の中心的な地位の低下だ。世界経済に準備通貨を供給し、世界で最も深く、予測しやすい金融市場を持っている。この点は、他のどんな国も、代替できない。QE2の絡みで商品価格が高騰し、ドル安になっているのも不思議ではない。結果、米国企業のコストは上昇し、収益が圧迫されてしまう。
 米国内ではわずかな効果しかもたらさず、海外諸国に弊害をもたらす、というのがQE2の不幸な結末だ。QE2は市場の期待を下回るものであり、いずれ追加緩和を迫られる。そして、今回のQE2は、Fedの非常時の行動の終わりを意味するものではない。
 Fedは今回、自身のバランスシートを使った政策を拡大する際の最優先の条件を示している。一つは、Fedの政策は、需要不足と構造改革に対処する全体的な政策の一部に位置づけられるべきことだ。そして、これらの政策は相互に連関すべきである。